町外れで見つけた「究極の地ビール」=ドイツビール紀行2006秋(その3)=

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さて、今回(2006秋)はクロアチア旅行がメインだったためバンベルク滞在は2日間のみ。宿泊先である集落Memmelsdorfからバンベルクにバスで出たが、昼間は市内の醸造所ではなく、周辺の集落の醸造所を巡ることにした。

大学近くのMarkus Platzから出ているバスに乗り、まずは小集落Vierethに向かう。
街道と運河に面した小さな集落だが、ここにあるのがBrauerei Mainlust。

手前の建物にBraeu-Gaststaetteとあるが、これは「醸造所直営の店」という意味。
この店の場合は、ここが宿泊施設で、その後ろに見える木組みの古い建物がレストラン・パブになっている。
普通、宿泊施設が付属している場合はBraeu(またはBrauerei)Gasthofとなっていることが多いが、ここはGaststaetteのまま。(なぜかは不明・・・)

反対側の建物。
入口はこの小さなドアで、中が見えない場合は結構勇気が要る(笑)
田舎町の酒場は、世界のどこにおいても地元民の集う場所。どんなオジさん達がたむろしているのか・・・・

ドアを開け、常連席でビールを飲んでいるオジさん達に軽く挨拶をして席に座る。

そして、ビールにありつけた。フランケン伝統のDunkel(ドゥンケル)。
店内にて樽出しのみ販売で、他の店には卸していない。こういう現地でしか飲めないビールの事を当研究所では「究極の地ビール」と呼んでいる。
ヘレスのみ瓶で販売されているが、これまた店内のみの販売。

こうしたビールは周辺地域で飲む事しか考えられておらず、長期輸送や長期保管に向かない。個人輸入・・・なんて事は考えず、飲みたい場合は行くしかない。

 

畑の中の散歩道

Vierethからは幹線を外れてWeiherというこれまた小さな集落へ向かう。
その距離は2〜3kmだが、交通機関が無い!・・・・これは最初から解っていたことだが、まぁこの位の距離ならば歩いてしまおう、と考えていた。

Vierethを抜けると直ぐに畑地が拡がる。
小さな丘をひとつ越えた向こう側がWeiherなので、緩やかな坂道をしばらく登る。

クルマが通れば乗せてもらおうと思っていたら、一台やって来た!

「しめた!」と思って手を挙げると、ある家のパーキングにクルマを停めてから子連れの女性が降りてきて

「どうしました?」と聞いてきた。

「隣の集落までクルマに乗せてもらおうと思ったけど・・・」
残念ながら、そのパーキングのある家は、彼女達の家だった。

「この丘を越えてしまえば散歩道になっているから楽しいよ」
と一応アドバイスを送ってくれた。

途中、赤いFIAT Pandaがこちらを見ながら通り過ぎていったが、思ったよりも遠くなく、道の先には集落が見えてきたのでパス。

30分ほどのんびりと歩いてWeiherに到着。
煙突が見えたのでそちらに向かっていくと、そこが醸造所であった。

ここも究極の地ビールだったBrauerei Kundmueller

Weiherに到着。
この小さなにあるのが1874年創業のBrauerei Kundmüller。
大きな駐車場を囲むようにして建つ醸造所の建物と、直営で宿を兼ねたガストホフ。宿を兼ねているだけあって、朝9時から営業をしている。

この醸造所のビールも、ここでしか飲めないいわゆる「究極の地ビール」。
(2020年注釈:2010年に業務拡大し現在では輸出もしている)

店の前にはビアガーデンもあったが、この時期(11月訪問)は残念ながら開いていない・・・寒い。

駐車場を見れば、先ほど通り過ぎていったフィアット・パンダがいるではないか!
帰りは彼に送ってもらおう。

昼食時だったのでメニューを取るが、こういう店では大体1〜2種類しかない。
オバサンが一人で厨房を切り盛りしており、忙しそう。
定番の肉料理なのだが、クヌーデルン(団子)が2個ついているのが、いかにもフランケンらしい。(多すぎて食べれない)

「あのフィアット・パンダはあなただよね?帰りに乗せてよ」
隣のテーブルで食事をしている親子に話しかけてみた。
「おお、君がさっき歩いていたのは見かけたよ。Vierthまでなら戻るから乗りな。そこから先はどうするんだ?」
「バンベルク方面・・・Bischbergの醸造所へ行きます」
「そっか、Vierthからは反対だなぁ・・・」

などと会話をしていると、別のテーブルの爺さんが
「俺ははBischbergまで戻るから、 醸造所の前まで乗せていってやるよ!」
と申し出てくれた。

おお!ありがたい!

 

小さな醸造所の中を覗く

「Bischbergまで行ってやるよ」
というオジサンのクルマに乗っての移動は約10分。先ほどエッチラオッチラと歩いてきた道をあっという間に通り過ぎる。

Bischbergの集落のほぼ中心にあるのが、Brauerei zur Sonnne。
この集落はバンベルクからのバスも多いので、比較的行きやすいのが利点。

2時半頃、ランチタイムはすっかり終わり、店内には近所のオジサン達が常連席「シュタムティッシュ」に座ってビールをチビチビと飲んでいるだけ。

そのウチの一人は、ここのオーナー氏だった。

ビールを注文し、ヴァイスビアを楽しんでいると、販売中の瓶ビールをズラリと並べてくれ、
「さぁ、これも撮りたまえ!」
と言う。
では、遠慮無く。パシャ。

「今、ちょうど仕込みの途中だから、中へどうぞ。」
ありがたいことに醸造所内に案内してくれた。

中で汗まみれに働いているのは、彼の息子らしい。マイスターの資格を取り、毎日この設備をフル回転させてビールを造っているという。
壁に掲げられた「ビール純粋令」のシンボル。
「ここでは、純粋令に沿って醸造しています」と書いてある。

次回へ続く>>