醸造所について

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醸造所はビールを醸す職人の聖域

Bäckerrei(パン屋)、Metzgerei(肉屋)など、ドイツでは職人がいる工房を併設している店を「・・・rei」と書く。そしてビールを作る職人「Braumeister(ブラウマイスター)」が居てビールを醸す醸造所の事をドイツ語では「Brauerei(ブラウエライ)」「Bräu(ブロイ)」「Brauhaus(ブラウハウス)」など言う。
(それほど大きな意味の違いは無いので、当研究所においては好んで「Brauerei」を使用。ただし、固有の醸造所名についてはその標記に従う)

「brauen(ブラウエン)」という動詞が「醸造する」という意味。
ドイツ語を習っていた頃、隣の席の人が「こんな単語があるなんて、さすがドイツ!でも、誰が使うんだろうなぁ・・・」なんて話をしていたが、ここに居る。
僕にとってはかなり重要な単語であるのだ。

Brauerei(醸造所)

ビールを醸す場所。シンボルは煙突。

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大小様々な規模があるが、醸造所の総称。
ミュンヘン、ハンブルク、ドルトムント他、巨大な麦芽サイロや貯蔵タンクが何十本も並んでいる様な醸造所もあれば、家族経営で細々とビールを造り続けている醸造所もある。
数字的には後者が圧倒的多いのだが、生産量としては、前者が圧倒的に多い。

大きいから不味いとか、小さいから手作りで美味い、という区分がなされないのが面白い。
これはビールの製法を示した「ビール純粋令」のおかげ。
「ビールの原料は麦芽・ホップ・水・酵母」と定義した16世紀に制定された法律は、今日でも頑なに守られており、ドイツビール全体の水準を高い所でキープしている。

Brauerei Gaststätte(醸造所併設食堂)

典型的な食堂。そしてビールは自家製。

br_gastste様々な訳語があるけれど、当研究所の公式の見解としては
「Gaststätte」とは「レストラン、ただし日本の田舎街に見受けられる夜には居酒屋と化す食堂」と定義する。

食事をするために店に入ると、小さな部屋に分かれていることが多い。
それぞれのドアにはその名が記してある。「Kuche(キッチン)」「Buro(オフィス)」「Toilette(トイレ)」(実際には「Damen(女性用)」「Herrn(男性用)」と分かれている場合がほとんど)
そして「Gastsdätte(ガストシュテッテ=客室)」という文字も見える。つまり、Gaststätteとは客室の事なのだが、それがそのまま店のカテゴリーになっている。

そして、この食堂に醸造所が併設されている、または醸造所にこの食堂が併設されている施設を、特にBrauerei Gaststätte(ブラウエライ・ガストシュテッテ)と呼んでいる。

醸造所に併設しているから「Brauerei Gaststätte」なのだが、他にはあるのかと言うと、「ある」。
肉屋に併設されれば「Metzgerei Gaststätte(メツゲライ・ガストシュテッテ)」、パン屋に併設されれば「Baeckerei Gaststätte(ベッカライ・ガストシュテッテ)」という感じ。

Brauerei Gasthof(醸造所ホテル)

 自家製ビールを飲んで酔っ払って寝る

brauereigh上記のGaststätteの中には、宿泊施設を併設している所も多い。
これらの施設を「Gasthof(ガストホフ)」または「Gasthaus(ガストハウス)」と呼んでいる。
醸造所にガストホフが併設されているから「Brauerai Gasthof」となる。上の看板では、食事処を意味するナイフ&フォークと共に、宿泊を意味するベットのアイコンが描かれている。

多少の観光地ならばいざ知らず、誰がこんな小さな村で泊まるのだろうと不思議に思っていたが、最近その謎が段々と解けてきた。

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冠婚葬祭各種宴会に対応可能なスペースを持つ醸造所が多い

Gaststätte(Gasthaus)にはFestsaal(またはHallなど、地域によっていろいろ)と呼ばれるホールを備えている事も多い。
何に使うのかというと、冠婚葬祭用なのだ。
これらに出席する人の中には、遠方より来る人もいるため、宿泊施設を提供する必要があるのだ。

よって、これらの開催が無いときには「宿泊部門」は空けていない、という店も多い。

さらに分かり易く説明すると、日本の田舎集落にある、普段は雑貨屋なんだけれども、冠婚葬祭の時だけ料理を作ってくれる「仕出屋」。
または、日本の港町にある宴会の予約が入った時にだけ民宿と化す「網元」。
これらと似ている。

Braustueberl(醸造所の飲みコーナー)

braustuebler 「Stueberl」とはドイツ語で●●という意味を持つ。よって、醸造所内でのレストランや居酒屋を「Braeu Stueberl(ブロイ・ステューベル)」と名付けている醸造所もある。
写真はドイツビール界の権威とも言うべく、ヴァイエンシュテファンでの一枚。
敷地の中に、工科大醸造学科、醸造所、配送センター、そしてこのBraeu Stueberlが並んでいる。

Ausschank(アウスシャンク)

醸造所から離れた場所にある店舗として

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醸造所にガストシュテッテが併設されているのではないが、醸造所から少し離れた所にガストシュテッテを構えている店もある。
この形態を、「Brauerei Ausschank(ブラウエライ・アウスシャンク)」と呼んでいる。
一番の好例は、このサイトでもよく登場する「Schlenkerla(シュレンケルラ)」。バンベルク市内にあるラオホビールの名店も実はアウスシャンク。現在、ここでの醸造はされていない。
醸造所はここから15分ほど歩いた丘の上にある。

左は旧市街にあるアウスシャンクの看板。そして、右は醸造所の看板。
同じ様な看板であるが、左の看板には「Brauerei Ausschank」の文字が、そして右の写真には「Brauerei Heller」という醸造所名が見える。

醸造所内のビール直販所として

ausschank3 都市部にあるガストホフやガストシュテッテには、「立ち飲みコーナー」が多い。
椅子に座ってしっかりとビールを楽しむのも良いが、中には「ちょっと一杯」、と駆け足で飲む人も多い。時間が余った時にビールを引っかけるなんて、とてもステキなことだ。

そんな人達にための、専用の窓口を設けている店が多く、これらの事も「Ausshank(アウスシャンク)」と呼んでいる。
そもそも「Schank」とは「持ち出す、搬出する」という意味であり、上記のBrauerei Ausschankも「醸造所からビールを持ち出した場所」という意味合いがある。
そして、単に「Ausschank(またはSchank,その複数形のSchaenke)」と言った場合は、セルフサービス用の窓口という意味になる。

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