ビアガーデン〜夏を愉しむためのステージ

640whead_bier概論

春の陽差しが心地よくなってくる頃に開くのが、ビアガーデン!
「外で太陽を浴びる」ことに執念を燃やすドイツ人達は、この時期を心待ちにしており、3月頃から何となくソワソワしている。

ローカル新聞などでもビアガーデン情報を特集することもあり、その時は部数がかなり伸びるそうな。そして、これを保管し、贔屓にしているビアガーデンの営業時間を確認したり、何だか面白そうなイベントをやっているビアガーデンを探しては赤ペンでチェックを入れる。

醸造所に限らず、クナイペ(居酒屋)やレストランも可能な限りテラス席を用意して、ビアガーデンに仕立てる。

ビアガーデン専用の敷地を持っている店だけでなく、スペースに余裕の無い店も何とか空間を空けて、少ない席数ながらもビアガーデンをオープンさせるのが涙ぐましい。

また街中にもビアガーデンが出現しはじめる。
サマータイム制により、日が一段と長くなる夏のドイツでは、ビアガーデンはビール好きだけでなく、ビールの飲めない人も、子供も楽しめる空間として生活に欠かすことのできない存在なのだ。

ここでは、そんなビアガーデンをイロイロなスタイルに分類してみた。

※ビアガーデンはドイツ語で「Biergarten(ビアガルテン)」ですが、当研究所では日本でも馴染みの深い「ビアガーデン」で標記します。

中庭型(Type-I)

一般的なビアガーデン

hummel_keller002-600x395醸造所の直営に限らず、一番多いのが中庭をビアガーデンとして開放しているタイプ。

冬の間、これらのテーブルは積み上げられており、駐車場になっていたり子供の遊び場になっていたりするが、夏になるとその駐車場が無くなりビアガーデンになるところが多い。

そこで疑問なのは、駐車場としての機能はどうするか、と言うこと。
その答えは「外へ」。

ドイツでは合法的な路駐がOKな事が多い。道路脇に区分された駐車帯が用意されているのだ。しかし、普段から地元民がこれらの駐車場をマイカーの駐車場に利用している事もあって、そもそもがいつも満車状態。
そこでもって人気のビアガーデン利用者の車が加算される事から、そのエリア内は車で溢れかえることになる。
ちなみに車で来た人のために、ノンアルコールビールやその他ソフトドリンクも豊富に揃っている。

公園型(Type-P)

人が集まれば、そこにはビールがある

do_park-332x205ドイツ人の公園好きは有名。
公園が多いから好きになったのか、それとも、公園好きの国民だから公園が多くなったのかは定かではないが、公園で遊ぶ、公園で集まる、公園でデーdo_biergarten-332x205トする・・・・、公園は春から秋にかけて、市民生活には欠かせない場所。

芝生の上にシートを広げ、瓶ビールを持ち込み、一日ワイワイとお喋りしている姿を、あちこちで目にする。
そんな重要な場所だけに、公園内のカフェにはもちろんビアガーデンが併設されていることが多く、最初からここを目当てにやって来るグループも多い。

写真はドルトムントのWestpark(ヴェストパルク)の全景(上)と場内に内にあるビアガーデン(下)。
グラスのデポジット(保証金)さえ払えばこのビアガーデンで「Von Fass(樽生)」のビールを買い、公園内の好きな場所で飲むことももちろん可能。
ちなみに瓶ビールをこの店で買う人は少ない。
すぐ近くにスーパーがあり、そこで買う方が遥かに安いのと、そもそもどの家にもビールはケース買いしてあるから、それを持ってくる人がほとんど。

広場型(Type-M)

空いたスペースはビアガーデンで有効利用

garten002夏になると、あちこちの街の中央広場には、ビアガーデンが出現する。
写真はミュンヘンの中心部で、木立の中に席が配置されていた。
天気の良い日はほぼ満席状態で、皆ビールをグビグビと飲んでいる。
多くの場合は近くのカフェやレストランがその権利を買って営業しているようだ。
どの町にも存在している

教会前の広場Kirchplatz(キルヒプラッツ)や、もともと市場のあったMarktplatz(マルクトプラッツ)といった場所にもビアガーデンは出現する。
それらに面した飲食店も一斉にテラス席を設置して、色とりどりのパラソルが並ぶ姿は、ドイツだけでなくヨーロッパの夏の姿と言える。

通路型(Type-S)

そこまでしても外でビールを飲みたい!

中庭は無くても、専用のビアガーデンを持っていなくても、ビアガーデンは出現する。もっともこの場合はビアガーデンというよりも「テラス席」と言うべきかもしれないが。
写真はデュッセルドルフにあるアルトビールの名店Zum Uerige。
天気の良い日には、店の前の歩道がほぼ占拠される。
座る席はほとんどなく、腰ほどの高さのテーブルが並んでいるが、それもほぼ満員御礼の事もしばしばあるが、気にすることはない。

ビールを持って歩いている店員からビールを買い、そこで立って飲むのももちろんOK!

rhein_terasse-300x225左の写真はデュッセルドルフ市内のライン川縁。
その名もRhein Terasse(ラインテラス)。
洪水の時期には水に浸っている河川敷には、ズラリとカフェが並ぶ。
ビアガーデンという訳ではないけれど、これも歩道を占拠している一種の例。
飲んでいるのは、もちろん地元の「アルトビール」で、0.2Lと小さなグラスだけで済む訳もなく、何杯もお代わりをしている人ばかりだ。

marcus_haus-332x205左の写真はベルリンのほぼ中心部にある醸造所の一コマ。

文字通りの「歩道」にテーブルを出しただけのスタイル。
ここまでしてでも外でビールを飲みたいという客はいる。
ちなみに、店の前の道路は歩行者天国てはなく、普通に車が行き来しており、信号待ちの車が詰まっていることもある。

そんな場所でビールを飲む客は、そんな通行人に向けての「看板」の役割も持っているようだ。
廃棄ガスが気になりそうだが、そういう人は最初からこの店には来ない。笑

丘陵貯蔵庫型(Type-K)

これについては、ひとつ区分というよりもビール文化の一カテゴリーとして扱う。別項目参照。