Appendorfという人口200人ほどの小さな集落にあるのが1890年創業のBrauerei Fößel Mazour。
この醸造所のブラウマイスターは1923年生まれと、ドイツでも最高齢のひとりだ。
(訪問2008年当時は80歳。現役かどうかは確認中)
マイスターの貫録もスゴイが、この醸造所の雰囲気もまたスゴイ。
手前の建物が食堂兼民宿(Brauerei Gasthof/ブラウエライ ガストホフ)で、道を挟んで奥に見えるのが醸造所。
たしかに小屋の入り口には「Brauerei(醸造所)」と書かれている。
興味深そうに写真を撮っていると、マイスターが出てきて中を案内してくれた。
醸造所内に並ぶのは、古くてもよく手入れされている醸造機器の数々。マイスター共にずっとこの集落の人々の為のビールを作り続けてきた、いわば集落の文化財だ。
100年以上前から使っている建物だが、それ以上の古さを感じるのは、おそらくこの一家が買い取る前から誰かがここでビールを作っていたのだろう。
ここは正にドイツの田舎街にある昔ながらの醸造所。
小さな醸造所の横には地下室「Keller(ケラー)」が掘られ、ここでビールが貯蔵されている。半地下部分はひんやりとした空間であり、空調設備無しでほぼ年間一定の温度を保っている。
貯蔵庫には隣で醸したビールの他に、ここでは造っていないヴァイスビアなども置かれている。
何とも不思議な光景であるが、ガストホフとして営業している限り、ヴァイスビアが好きなお客さんも当然居るので、こうして醸造していないビールも補っている訳だ。
店内は真ん中にサーバースペースがあり、それをグルリと取り囲む様にしてテーブルが配置されている。壁に作り付けられたベンチと椅子で一つのテーブルを囲むのも、典型的な田舎スタイルで、多くの店で見られる様式。
この小さな醸造所で醸されるビールは「Lager」のみ。
さらに販売は、このガストホフのみ。
瓶売りさえもしていないので、まさにこの集落のオジさん達のためだけに作られているビールと言って良いだろう。
このエリアで飲まれているビールのほとんどが大カテゴリーである「Lager」なので、そのLagerの何なのか、という疑問が残るが、ここのビールはちょっと色の薄いデュンケルという感じ。
居酒屋スペースの横には、大きなホールがある。
集落の醸造所では、かならずこの様な空間があり、ここでパーティーやら政治集会、または冠婚葬祭などが開催される。
この醸造所の変わったところは、このブラウマイスターのコレクションである楽器が飾られた博物館があること。ギター、バイオリン、アコーディオン、金管楽器・・・・凄い数の楽器が並んでいる。
その他にも、修理前のオートバイも多数・・・・。
■Information■
Brauerei Fößel Mazour
Baunacher Str. 28,
96169 Appendorf/Lauter
<最終訪問 2008年3月>
Appendorfはこんな街
バンベルク郡の大字Lauterrというエリアにある人口200人ほどの小集落。
南へひとつ山を越えるとマイン川があり、そこには川沿いに幹線道路も鉄道もあるが、この集落群には集落間を繋ぐ細い道が一本あるだけ。
一応公共交通はあるものの、1日数本しかないため現実的にはあまり使えない。