80歳のブラウマイスター=ドイツ・ベルギービール紀行2008(その18)=

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80歳のブラウマイスターと最高レベルの雰囲気

Appendorfという集落にあるFoessel Mazour(ドイツ語表記はFößel Mazour)という醸造所のブラウマイスターは80歳(2008年3月時)、という話を聞きやって来た。

この集落は先ほど立ち寄ったStettfeldから数キロの所にあり、その人口は約200人。1890年創業のこの醸造所で醸される「Lager」のみで、瓶売り無し。
まさにこの集落のオジさん達のためだけに作られているビールと言える。

そしてこの醸造所、僕が350軒ほど(当時)巡ったドイツの醸造所の中でも最高レベルの雰囲気があった。

醸造所は道を挟んで2棟が建っている。
その小さな醸造所の横には地下室「Keller(ケラー)」が掘られ、ここでビールが貯蔵されている。

写真左:手前の建物が食堂兼民宿、道を挟んで奥に見えるのが醸造所
写真右:醸造所横には地下室(ケラー)へと続く扉がある

店内は真ん中にサーバースペースがあり、それをグルリと取り囲む様にしてテーブルが配置されている。
壁に作り付けられたベンチと椅子で一つのテーブルを囲むのも、典型的な田舎スタイルで、多くの店で見られる様式だ。

ビールリストなんて物はない。

一種類のみ醸され続けているビールは、「Lager(ラーガー)」。
このエリアで飲まれているビールのほとんどが大カテゴリーである「Lager」なので、そのLagerの何なのか、という疑問が残りるが、ここのビールはちょっと色の薄いデュンケルという感じ。

この曖昧さを例えるのならば、日本の居酒屋で「焼酎」とだけメニューに書かれており、それが芋なのか、麦なのか、それとも米なのか解らないのと一緒。

居酒屋スペースの横には、大きなホールがある。
集落の醸造所では、かならずこの様な空間があり、ここでパーティーやら政治集会、または冠婚葬祭などが開催される。

この醸造所の変わったところは、このブラウマイスターのコレクションである楽器が飾られた博物館があること。
ギター、バイオリン、アコーディオン、金管楽器・・・・凄い数の楽器が並んでいる。

マイスターはここでトランペットを披露してくれた。
素晴らしい肺活量。

このマイスター氏、いろいろと収集癖があるらしく、裏手の倉庫にはミニバイクが所狭しと並んでいた。
ヒマを見つけてはチョコチョコ直しているらしいのですが、これだけの数を直すには・・・・・・・・・。

「ちょっと醸造所内を案内しようか・・・」

ブラウマイスターに案内されて醸造所内に入る。
100年以上前から使っている建物だが、それ以上の古さを感じるので、おそらくこの一家が買い取る前から誰かがここでビールを作っていたのだろう。

写真左:レンガの土台に据え付けられた釜。
重い荷を担いでこの階段を登るのが大変そう。
写真右:クールシップ(冷却曹)、この地方では結構使われている

半地下部分はひんやりとした空間であり、空調設備無しでほぼ年間一定の温度を保っている。
この様な地下「Keller(ケラー)」を持つ醸造所は結構多く、フランケン地方ではあちこちで見かける。ひんやりした空間で貯蔵され、この店の場合、飲まれる場所はここから20mほどの直営店のみ。ビールには旅をさせないという昔ながらの姿勢が貫かれている。

写真左:ケラーの中はタンクが押し合いへし合い状態で入っている(笑)。
ちなみにビールは一種類のみ。
写真右:樽置き場

貯蔵庫には近くの集落にある醸造所で作られたソフトドリンクやここでは作っていない種類のビールなども置かれている。
醸造所でありながら、他醸造所のビールを買い取り、自社で醸造していないビールを補っている訳だ。

暖かい時期はビアガーデンがオープンし、村人が集う。

写真左:貯蔵庫(ケラー)
写真右:敷地内にあるビアガーデン

さて、次の集落へ・・・

次回へ続く>>