田舎集落の共同醸造所=ドイツビール紀行2008春(その13)=

<<前回の続き

さて、翌日。バンベルク中央駅からショートトリップに出かける。
行き先はSesslachという街。
直線距離はたいしたことないが、公共交通を使うとなると一度Coburgまで行かねばらない。そこから田舎バスに乗り換えてアクセスする。
一度チャレンジしたが、過去バス停が分からずに乗り遅れたことがあった。
今回は、前回の失敗からバス停の把握していたのだが。。。。

何とバス停が工事中!!
どこ行きのバスが、どこの停留所から出るのかがこれではわからない!

それでも何とか人に聞きつつバスを見つけ、無事に乗車。
昨日に続き、田舎道をトコトコとバスは進む。

バスで向かった先はSesslach。
Coburg郡に属するフランケン地方の小都市である。
はっきり言って全く無名の町なので、あまりマークせずにやって来たが、町外れのバス停から町へと至る道は、城壁に沿っている。
そして、グルリと囲まれた城壁の中には中世の町並みが広がっていた。
それも、観光用に整備されている訳でもなく、普通に市民が暮らす町並みだ。

写真左:街の中央広場。チェーン店などは無い。
写真右:路地を抜けて広場へと続く小径。街は迷路の様。

街の中を歩いていると、大きなトラクターがグォングォンと音を立てて走り去って行った。観光都市だとこういう車両が侵入してくることは無いが、活きている街はこういう音があって好きだ。

さて、なぜこの町へやって来たかというと、それはもちろんビール。
この街にあるKommun Braeu(コミューンブロイ)のビールを楽しむ事だ。
コミューンブロイとは、共同醸造所のことである。

ここからはビール文化研究家としての仮説になるのだけれども、流れとしては次のような感じ。
1>かつては、どこの宿屋もレストランも自分の所でビールを作っていた。
2>しかし、だんだんとそれも面倒になってきた。
3>自分だけでなく、周辺のみんなも同じことを思っていた。
4>ならば、共同で醸造所を作り、マイスターを雇い、ビールを委託醸造しよう!

ということで、共同醸造所のような物ができて来た、というストーリー。

写真左:醸造所全景
写真右:醸造所の壁は城壁の一部。(写真は城壁の外からの眺め)
外からは小さな穴の様なトンネルを潜って町の中へと入っていける。

醸造家を見つけて話を聞こうと思ったのだが、何と今日は休み!

ちなみに、ここではビールを醸造しているだけで、それを楽しめる店が併設されている訳ではない。
このビールは、現在この町の広場にある2軒で飲む事ができるということなので、気を取り直して飲みにいく。

■Gasthof Reiwand
まず訪れたのは広場の北側にある小さなレストランGasthof Reiwand。
赤い木組みが印象的な小さなレストラン兼宿屋である。
入り口はトンネルの様な空間で、そこから階段を何段が上って店内に入る。
店の前にテーブルも出ているが、ちょっと寒いのでさすがに誰もいない。もちろん、平日だということもあるが。

写真左:ガストホフ全景
写真右:店内の様子。左に見えるのは大型のストーブ。

さて、ここを訪れたのは2008年の3月だが、秋から春のシーズンに食べられている料理の一つが鯉。(Karpfen/カープフェン)
ドイツ料理は肉料理が中心だが、マス(Forelle)をよく食べるのは知られているが、鯉もかなりポピュラーな魚である。
今まで実際に食べるチャンスはなかったので今回は初挑戦してみる。

注文をしたのはGebacken Karpfen mit vershiedene Salat(鯉のフライといろいろサラダ)。普通のフライではなくビールで小麦粉を溶いたもののようだ。
付け合わせにはジャガイモのサラダと普通の野菜サラダが出て来た。
どちらもかなり大きな皿にもられている。
これらが付いて9.5ユーロ。(2008年3月当時の価格)

写真左:ビールはボックビール。グラスには醸造道具のイラストが描かれている。
写真右:鯉のフライ。量り売りなので値段が書かれた旗を立ててある。

■Land Gasthof Roten Ochsen

続いて訪れたのは、すぐ近くにあるLand Gasthof Roten Ochsen。
このブログでも、またメインサイト「ビール文化研究所」でも何度か紹介しているが、Gasthof(ガストホフ)とは直訳すれば「客の館」すなわち宿屋。

宿屋の中でもランク的にはそれほど高級な部類ではないが、家族経営で小さく営んでいるところが多く、多くの集落にレストランを兼ねたガストホフが一軒や二軒存在している。

Land Gasthofとはあまり一般的な名前ではないが、「田舎」を意味する「Land(ランド)」との合成語で、要するに「田舎にある宿屋」を意味している。

先ほどの店と同様に、店内はシンプルなテーブルが並び、清潔なテーブルクロスが掛けられている。
訪問したのは午後2時頃だったので、客は全くいない。

店員さんらしき人達が昼休みのひとときを過ごしていたが、僕はビールを飲むだけなので、一声掛けて適当な席に座る。

ビールはその名も「Original sesslacher Hausbrauer(オリジナル シェスラッハ ハウスブラウアー/シェスラッハのオリジナルのハウスビール)」

店員さんに共同醸造所の事について聞いてみた。

現在、この共同醸造所に委託しているのは、僕がさきほど訪れた店とここの二軒。
基本的に材料は一緒なのだが、その麦芽やホップの量、熟成期間の設定などはそれぞれの店からの注文に応じて作られている、との事だ。
(注:2008年当時の話)

今回はここのブラウマイスターに会う事はできなかったが、近々再訪問して話を聞いてみたい。

次回へ続く>>