小集落Geisfeldへ=ドイツビール紀行2006(その6)=

■丘陵地帯をゆく

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バンベルク(Bamberg)から、その郊外にある集落メンメルスドルフ(Memmelsdorf)へ向かう幹線道路は、幾度となく通っているが、今回は2004年以降毎回お邪魔している醸造所Brauerei Drei Kronenへあと100mという所で幹線から外れ、丘陵地へと向かう。
集落のスポーツクラブの中を貫いている小川に沿っては自転車道兼遊歩道が作られており、サイクリングやウォーキングを楽しむ人々が見える。
ドイツには珍しく野球場がある。バンベルクには米軍が駐屯しているのでもともとは彼等が建設した球場だろう。

黄色に赤く大きな斜線が引かれた標識は、集落を完全に抜けた事を知らせる看板である。Memmelsdorfを離れ、次の集落までの距離が書いてあるのだが、その距離とは中心部までの距離なので、数百mも走ればポツポツと家が見え始め、次の集落に入る。

道中、所々にキリスト像が点在している。
どこも誰かしらが管理しているようで、花が添えられており、周辺の掃除も行き届いている。必ずベンチが置かれているので、そこで小休止。

 

■財布を拾ってしまった話

この辺りはほとんどが農家で、母屋の他にトラクター等を保管している納屋が敷地内に建っている。時々大きなトラクターが道を占拠しているが、のんびりムード漂うこの風景にすっかりと溶け込んでおり、決して多くはない車の流れもそれに準じている。

緩やかに登ってきた道が一気に下る。Litzendorfの集落の中心にある教会の下で交差するのはBambergからの道だ。

ビール紀行をしていると、この交差点は何度か通り、その風景も何となく記憶に残っている。たしか郵便局があったので、角を曲がり文房具屋を兼ねた小さな店を注意深く観察すると黄色地に黒いホルンの書かれたDeutsch Postのマークが見えた。
ここで日本への絵はがきを出す。

道は森の切れ間を通り抜けたら、視界に集落が入ってきた。ここが今回の一カ所目の目的地ガイズフェルド(Geisfeld)である。
写真を撮ってフト足元を見ると何か落ちている。財布のようだ。

こんな所に置いておいても仕方がないので、集落の警察に届けようと思い持っていく。

■小集落Geisfeldに到着

集落はS字にカーブした道路を中心に構成されている。道路沿いには赤い看板が建っており、警察はどこかな、と凝視してみると集落内にあるゲストハウス(民宿のようなもの)の案内であった。

3軒のゲストハウスのうち2軒は醸造所に併設されている。さすがビール王国フランケン。
(写真はその一軒Brauerei Krug)

この集落ではまず警察に財布を届け、さらには水を買いたい。
天候が良いのは最高だが、気温もかなり上がっており喉が渇いた。

教会近くをフラフラと歩いていたら、一人の女性がいたので警察はないかと聞いてみた。
「この辺で一番近い警察はバンベルクよ」

そりゃそうだ。
ここからバンベルク市内までは数キロの距離だ。交番制度も無い国なので警察があるわけない。
財布を拾った事を話すと、それは困ったと家にいた彼女の母親らしきオバサン(お婆さん?)と話を始めた。
中を覗いてみると現金、カードの他に免許証などが入っていた。その中に持ち主の住所らしき情報が入っていたので、オバサンは早速電話をした。

電話を切ると
「家の人に連絡がついたよ、帰ってきたらウチに電話をくれるように言っておいたわ」
と言うことであった。
普通、こういう場合は幾らかお礼をするのがドイツでも普通らしい。しかし、こちらは旅の身。
「持ち主が来たら礼は要らぬと伝えてくれぃ」
とこの場を締めた。

ついでに聞いてみた。
「隣の肉屋では、さすがに水は売っていないよね?」
「売っているかもしれないけど、ウチで飲んで行きなさいよ」
オバサンは冷蔵庫から水のボトルを持ってきて、コップに注いでくれた。
ふ〜、美味い。

しかし、水は買いたいのだ。
汗をかきかき走るのだから、やはり水を確保しておきたい。

そんな事を思っていると、先ほどの娘さんが
「この水を持って行きなさいよ。」
と水のボトルをくれた。

おお、ありがたい!

■Brauerei Giess

Brauerei Krugへ向かう。この店は車両進入禁止の細い路地にあり、さっきのオバサン宅の直ぐ裏手にある。鉄製のライオンを象った看板が見事で、その向こうには教会の屋根が見える。
一見農家の様にも見えるが、敷地の奥の方にもテーブルが並んでおり、庭全体をビアガーデンとして使っているようである。

醸造所のドアは閉まっているが、台所からは笑い声が聞こえている。玄関に掲げられている案内を見ると、どうやら夕方からの営業のようだ。数枚の写真を取り、次の醸造所へ向かう。

次の醸造所といっても小さな集落内なので直ぐに着いた。
Brauerei Griessは集落の外れに美しいビアガーデンを持つことで知られている。ここもやはり平日は夕方からの営業であり、残念ながら今は閉まっている。醸造所横の居酒屋もやはり閉まっている。

困ったなぁ、と店の周りをウロウロとしていたら、経営者の家族らしき車が買い物から帰ってきたので、声を掛けてみる。
「店内では飲めないのですか?」

すると、
「瓶で良ければ出すわよ。何がいい??」

店が開いていないのだから当然ビール樽も繋いでいない。しかしせっかく着たのだから瓶ビールでも飲みたい。
お言葉に甘え、瓶ビールを頂くことにした。
「では、一番売れている定番ビールをください」

しばらくして、瓶入りのヘレスと陶器のジョッキを持ってきてくれた。
裏庭のビアガーデンに腰掛けてジョッキに注いだビールをグビグビと飲んでいると、さらに新しいコースターを2〜3枚持ってきてくれた。

せっかくなので、ビアガーデンの話を聞いた。
オバサンが言うには、夕方からの営業であるが開店と同時に地元の人達がゾロゾロとやって来て、いつも大盛況だという。
今日は時間的に開店を待っている訳にはいかないが、この地域に何日か滞在しているので、数日以内に寄ると約束する。

ちなみに、先ほどの瓶ビールはオゴリであった。
「その代わり、いつかビアガーデンにもいらしてね」

次回へ続く>>

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