醸造所は地域の郵便局だった
1650年創業の醸造所。「Zur Post」と冠しているとおり、もともと郵便局としての機能を持った田舎町の宿屋がその起源。今日では郵便局は併設していないものの、醸造所のシンボルはホルンで当時からの伝統を守っている。
集落コミュニティーの中心にあるのが醸造所。その人が集い語らう場所に郵便局の機能があることは何の珍しいことではなく、ドイツ中あちこちでやはり「Post」を冠した醸造所や食堂を見かける。
日本でも農村集落にある八百屋兼魚屋兼仕出し料理屋兼雑貨屋兼民宿が切手を扱っていたり、ゆうパックの取り扱いをしているのと何ら変わらない世界ともいえる。
違うとすればそこでビールを作っていること。
店内のあちこちに郵便関係の絵や置物がある。
入り口にポストがあったが、これは差し出すための物ではなく、この店の郵便受けであった。
写真左:郵便ラッパを吹く配達員を描いたステンドグラス。
写真右:集落を結んだ郵便馬車。
バイエルン伝統のビールを楽しむ
ラインナップされているビールの中でも定番はやはりヘレス。
基本的にバイエルン州においては黙っていたらヘレスが出てくる環境である。
この店では「Gold」という名で販売されているが、各醸造所でその呼び名が様々なのが面白い。
もうひとつの定番ビールはヴァイスビア。
握りの部分に醸造所ロゴが描かれているのは新鮮な感じ。
続いてシーズンビールとして開栓されていたZwickel Bier(ツヴィッケルビア)。
これは南ドイツ各地で見られるビールなのだが、あちこちの醸造所で飲み歩きながら検証した結果「無濾過で酵母が生きたままのビール」。
まだフィルターなどがなかった頃の、古き時代を思いながらビールを楽しむ。
タコさんウインナー登場!?
ここBrauerei Zur Postでは「セットメニュー」を発見した。
「焼き鳥盛り合わせ(2〜3人用)」といった何人か用のメニューは日本では珍しくないが、「一人一皿」を基本とするドイツでは、あまり見かけることが無い。
この店のセットは4人用のメニューで、「夫婦+子供二人」が基本となっている感じだ。
大皿にビール2杯とソフトドリンク2杯が付きつく。ここで面白いのは、ソフトドリンクをビールに変えることがOK、と言う事。
それは、日本と違いビールとソフトドリンクの価格差が無いため。
内容はフライドポテト、温野菜などと一緒にメインディッシュとして肉塊料理である「ハクセ(Haxe)」が付いてくるのだが、何と訪問時は「売り切れ!!」。
代わりにチキンステーキとタコウインナーという組合せがサービングされた。
酔って泊まれるホテル併設
この醸造所はホテルを併設している。
田舎町とは言え、ロマンチック街道の目玉とも言えるNeuschwanstein(ノイシュバインシュタイン)城にも近く、またスキーを始めとしたリゾート地であるため、観光客も多く訪れる。
美味しいビールを楽しんで、酔っ払ってそのまま寝る、あぁ至福の時。
写真左:ホテル部門の廊下
写真右:ドアに掲げられた郵便ラッパ
▪️Information▪️
Brauerei Gasthof zur Post
Hauptstraße 25
87484 Nesselwang
<最終訪問 2008年8月>
Nesselwangはこんな街
ロマンチック街道の終点とも言われるFussenの西20kmほどに位置する人口3500人ほどのリゾート地。ローマ時代には街が形成されていたほどの歴史も持つ。
オーストリアとの国境に近く、その場所柄からウインタースポーツが盛んな土地で、オリンピックのメダリストを多く輩出している。