ラストナイトの出会い=ドイツ・ベルギービール紀行2008(その19)=

<<前回の続き>

Oberhaid集落のBrauerei Wagner

続いての集落は、Appendorfから丘をひとつ越えたところにあるのがOberhaid。
この集落にも1550年から続く醸造所Brauerei Wagnerがある。

老舗の醸造所らしく、中央広場のすぐ近くに立地している。
日本の田舎町に役場、農協、郵便局があるように、ドイツの古い集落にはRathaus(役場・下写真)、Post(郵便局)、そしてBrauerei(醸造所)があるのだ。

醸造所の横にはガストホフ(食堂)があった。
訪問時は平日の午後3時頃ということもあって他の客はおらず、店内は休憩モードだった。
しかしビールは外すことなくしっかりと繋がっているので注文。

 

 


この醸造所ではピルスナー、ドゥンケルの2種類のみラインナップ。
この日繋がっていた樽はピルスナーのみ。4軒目なので小さなグラスで頂く。

田舎町の醸造所の特徴だが立ち飲み席がない。
ある程度大きな街の中心部にある酒場の場合、カウンター近くや入口付近が立ち飲みスペースとなっているが、それほど人でごった返すということは無いのだろう。

 

HallstadtのSchwarzer Adler

OberhaidからHallstadtまで来ると、もうバンベルクは直ぐそこ。
実際、この集落まではバンベルクの芝居で来る事が可能。
このHallstadtのDoerfleins地区にあるのが醸造所Brauerei Eichhornとその直営ガストホフである「Schwarz Adler(シュバルツ・アドラー)」である。

店内に入って驚いたのは、何とほぼ満員!
こういう時は、図々しくどこかのテーブルに座らせてもらうに限る。
幸い、老夫婦何組かで座っていたテーブルに空席があったので、相席をお願いした。

この醸造所では、ノンフィルターのラガー系ビールが数種類飲める。
今回はヴァイスビアをチョイス。なぜなら、隣に座っていたオジさんが、「ここのヴァイスは美味い!」と誉めていた。

このオジさん、この周辺のビールを飲み歩いているらしく、話が合う。
僕もここ10年(2008年時点)でこの辺りの集落のビールはかなり飲んでいるので、それなりに会話の相手をしていると、周辺にいた他のお客達が何だか変な日本人がいるということで、会話に参加してきた。

こうなると、皆が小さな村の醸造所情報をくれるので、こっちは一生懸命にメモを取る。

続いて軽く食事を、とのことでソーセージを注文したが、
聞いたことも無いソーセージがあった。それがKrakauer Wuerstと言う名のソーセージなのですが、初めて聞く名前だ。

ソーセージは基本的に地名が付いている。
フランクフルター、チューリンガー、ミュンヒナー・・・など。

では、このKrakauer(クラカウアー)とは??
隣の席のオジさんに聞いてみると「Krakau(クラカウ)」というポーランドの地名だと言う。

ちなみに、このソーセージ2本はザウアークラウト付きで3ユーロ。
ザウアークラウト無しで2.7ユーロだった。
Weissbierは0.5Lで1.8ユーロ。
(注;価格は全て2008年当時)

さて、ここからバンベルク市内へと帰る。
この日の走行距離は約30キロ。5軒の醸造所を巡ったこと。

翌日午後には列車に乗り、フランクフルト空港へと向かわなければならないので、宿に帰り帰国の準備をする。
しかし、ここからドラマチックな展開が待っていた。

 

最終日のサプライズ

朝から晩までグッタリでだったが、バンベルクそしてドイツ旅行の最後の夜、と言う事で気合いを入れて宿近くの醸造所Brauerei Spezialへと足を運んだ。
この気合いが、今後の人生に大きな影響を与えるのだとは、もちろんこの時点では知らず。

ラオホビアを一杯注文した。
一日中飲んでいたせいもあり、今回は「Schnitte,Bitte!(半分だけちょうだい)」。
毎晩ここで飲んでいたので、顔見知りになったオバちゃん店員が
「半分なんてなによ〜!!」と笑ったが、限界…

写真を撮ったり、今日の取材の整理をしたりとしていると、店員と親しそうに話をしている数人組がゾロゾロ。何となく見た事あるような顔だったけど、僕の横をそのまま通過していった。

さて、会計を済ませ、外で撮った写真が一番上の写真。
上記左写真の右の方に、体半分隠れている男が声を掛けてきた。

「君はさっきからビールの写真を撮ったりしているけど、ビールが好きなのかい?」

「そう、毎年この街に通い、この街を起点に小さな集落の醸造所を巡っているんですよ」
と僕が答えると、
「おお、君はDas Bierkultur Institutのプレジデントか?」
何と彼は僕の事を知っていた。

「僕らはフランケン地方の醸造所について、本を作ったりイベントをやっているグループなんだ」と彼は言った。
何と、僕が毎回旅の指針として手にしていた本は、彼らの編纂だったのだ。
この周辺の醸造所とは皆顔見知りで、「こんな日本人が来たよ」と僕の名刺をあちこちの醸造所で見かけたのだと言う。

う〜ん、凄い偶然。

彼に連れられてグループの座っている席についた。
先ほど会計を終えて店を出たばかりなので、店員のオバさんが「あら、また飲むのかい?」と笑って迎えてくれた。

もう飲めない、と思ってはいたものの、彼は勝手に
「ラオホをマース(1Lジョッキ)で彼に」と注文。(笑)

一通り挨拶をして、フッと気がついた。
何と、僕の斜め前に座っているのは、数年間僕が探していた男ではないか!!!

今回のビール紀行「その12」でその様子を書いたが、僕はバンベルク市内で小さな醸造所を営んでいた人をずっと探し歩いていた。
「おおお!!僕はあなたをずっと探していたんだよ!!」
思わず声が出た。

彼は引っ越し後、新しい醸造所開業の準備をしていると言う事だ。
次回以降、バンベルクに来るときにまた彼のビールを飲むことは出来るだろう。

彼らとの出会いは、とても貴重な出来事だった。
なにせ、この辺りの醸造所情報を全て持っている。さらにこの業界に顔も広い。
この場で、僕の今後のフランケンビアライゼ(ビール紀行)に関して全面的なバックアップを約束してくれた。
ただし、条件として
「その1Lジョッキを飲み干しなさい!」
との事なので、一生懸命飲み干す(笑)

(2024再編集時 追記)
その後、彼らとはずっと友好関係が続いている。

次回へ続く>>