マイン川沿いに点在する集落巡り=ドイツビール紀行2007(その6)=

<<前回の続き>

老舗醸造所と木製冷蔵庫

川を越えた集落はUnterleiterbach(ウンターライターバッハ)である。
ここにあるBrauerei Hennemannという1885年創業の醸造所があったのだが、なんと休みだった!
ただし、裏手でオーナーらしき人が何か仕事をしているので、声だけ掛けてコースターをいただいた。
うーん、残念。

ここからStaffelstein(シュタッフェルシュタイン)まで線路沿いを北上する。
そしてやって来たのはEbensfeldという集落。
Lichtenfels郡の中にある一つの集落で、人口は2000人強。
鉄道駅もあるのでそこからのアクセスもできるが、ここまで僕は自転車でやって来た。
教会のある通りを抜けると、緑の建物が見えてきた。
これがこの集落の醸造所Schwanenbraeu(シュヴァーネンブロイ)である。

小さな商店街のほぼ真ん中にあるこの醸造所の創業は1752年。
なかなか老舗の部類だが、通りに面したこのガストホフはまだ新しそうだ。
裏へと続く通路にはテーブルが置かれており、簡易ビアホールになっている。
ここから教会が眺められる。

ビールはフランケンの定番ヘレス。
デュンケルは「Adam Riese Urtrunkdunkel」(アダム・リゼ  ウアトルンク デュンケル)なる名前が付いているが、これはこの地域出身の中世の数学者の名前を取った物である。
シュタッフェルシュタイン周辺には、彼の名を取った店の看板が増えてくる。
通路の先は、何ともまあ老舗の貫禄のある風景である。
いつも思うのだが、醸造所の風景は日本の味噌蔵・醤油蔵、酒蔵と似ている。
ここは特にその傾向が強いと感じた。

店内にあった木製の冷蔵庫は、中は氷ではなく、電気式に交換されていた。
まだ冷蔵庫が珍しい時代に先代が大枚叩いて買った物なのだろう。
確かに新しい物を買った方が安いかもしれないが、道具を継承するということは、こういうことなのだ、と冷蔵庫が語っているようであった。

ちょっと高台にあるガストホフからの眺め

続いてやって来たのは、Unterneusesという人口300人ほどの集落にあるBrauerei Martin。
創業は手元の資料には「約100年前」と曖昧な事が書いてある。
バンベルクから徐々に北上してきたのは、ここの営業時間が4時からというのに合わせたためである。
醸造所から道を挟んで反対側に建っているのが、この店のガストホフである。


看板にはレストランを意味するナイフ・フォーク・スプーンの他、ベッドが描かれている通り、宿泊もできる「ガストホフ」だ。
ビールはデュンケルのみで、樽売りオンリー、瓶売りはなし!さらに、この直営店でしか出していない。
フランケンには、そんな「究極の地ビール」がたくさんある。
一種類しかないので、「とりあえずビール!」と言えばビールが来る。


道路が集落よりも一段高い所にあるためか、テラス席の向こう側にはフランケンの景色が広がっている。
ただし、そこから席が埋まっていくため、展望の良い席は取れなかった。
もう、何十年と一緒にいるグループの面々が、何度も大声で笑いながら、ビールをがぶがぶ飲んでいた。

丘を登った小さな集落と、岩山

Unterneusesから、そのまま道を真っ直ぐに進めば、帰りの列車に乗るBad Staffelsteinだが、ここはちょっと道を外れて丘の上に登る。
登るといってもそれほどの急坂ではなく、距離的にも1キロ足らずでPferdsteinに到着した。
このエリアはフランケン地方の中でも一番山がちな「Fraenkisch Schweiz(フランケンのスイス)」と呼ばれているエリアの端なので、丘の向こうには岩山が見える。
もっとも、山がちといっても日本の山岳地帯と比べれば「山」と呼ぶには失礼な高さではある。


その山の麓の小さな村にある醸造所が、Brauerei Leichtである。
1870年より現在のオーナー家が経営している店で、醸造所に宿屋が併設された典型的なBrauerei Gasthofで、集落のほぼ真ん中にある教会の正面にあった。
「教会近くに醸造所」とセオリー通りである。

教会の近くにあったBrauerei Leicht。
この名前の醸造所はあちこちにあるが、基本的には系列店でも何でもない。
ただし、親戚である可能性は少しある。
実は、同名に限らず醸造所の親戚関係というのはよくある話で、ブラウマイスターが婿に入っただの、あの店の次女がどこどこの醸造所に嫁へ行った、なんて話をあちこちで聞く。
八月とはいえ(取材時は2007年8月14日)、午後3時を過ぎた頃には段々と涼しくなってくるドイツの田舎町。
それでもビアガーデンが開いている限り、客のほとんどが外でビールを楽しむ。
ビールはデュンケルを注文した。

他にもヘレス、ヴァイスがあったが、基本的にはこの店のみで販売される「究極の地ビール」である。
近くの集落に住む人達が、ビアガーデンでくつろいでいた。
オジサン達はKrug(クリューク)と呼ばれる陶器のジョッキでビールを飲んでいる。
ビアガーデンでは陶器に統一されることが多いのだが、僕のはグラスであった。
ただの気まぐれか、クリュークとグラスでビールを分けているのか、謎である。
ソーセージを二品。


まず、写真左はSauer Zipfel(ザウアー・ツィップフェル)と呼ばれる茹でソーセージである。
ニュルンベルガーを茹で、タマネギを載せた上から酢+ビネガーのソースを掛けた物だ。
さっぱりした味わいで、脂っこい料理が多いビアライゼの途中に、良いアクセントを与えてくれる。
この時は、隣に座っていたオジサンの物を撮影だけさせてもらった(笑)。
さらに、その後試食させてもらった(爆)。
続いてWiennerヴィエナー、要するにウインナー・ソーセージのことである。
ウインナーに関しては諸説あるが、フランクフルト出身の肉職人がウィーンに移り住んで広めたという説が一番有力かな
・・・・というのが、当研究所としての考えである(こちらを参照>>)。

村の外れには、小さな丘の横にケラー(地下室)があった。
ひょっとしたら、さきほどの醸造所のビール貯蔵庫かもしれない。
そうだとしたら、この鍵がかかったドアの向こうにビールがたくさん……。
そんな想像が楽しいフランケンの田舎である。

帰路につく

Pferdsteinの集落の出口(振り返って撮ったので、入口側が写っている)。
ここから台地の上をStaffelsteinまで走る。
この周辺はフランケン地方の中でも丘が連なるエリアであり、かつ、「フランケンのスイス」と呼ばれている山岳地(?)の端っこなので、岩山が見えたりする。
牧草地の草を集める農夫がいた。
木になっている赤い実は……リンゴである。


丘の上の一本道。
ここを自転車でキコキコと走っていく。
その先に見えるのは、修道院であり、そこでもビールの醸造が行われている。
以前は、自転車でこの山に向かって走った(笑)。
その裏側に点在する多くの集落にも、醸造所があり、これらを片っ端から訪問していった。
Staffelsteinは温泉で栄えた古い街である。
あちこちに「Adam Lisaの街」との謳い文句が掲げられているが、彼はこの街出身の数学者だ。
僕は知らなかったが、ドイツでは有名人だそうだ。
この街から列車に乗り、バンベルクに戻る。
長い長い一日が終わった。

<次回へ続く>>