極小集落の醸造所=ドイツビール紀行2007(その5)=

<<前回の続き>

田舎町で花を摘む老夫婦

さて、ビア旅の4日目。
前日、地図とバス路線図とを睨めっこし、バンベルク駅前からRattelsdorf行きのバスに乗れば、結構良いルートが組めると分かったので、それを実行した。
バスに自転車を載せて出発!
到着したのはRattelsdorfというバンベルク郡の小さな集落だが、一応「大字(おおあざ)」レベルの街なので、そこそこの大きさがあり、マルクト広場には立派な「Kirchweihbaum(キルヒヴァイバウム)」と呼ばれる祭典用の木が立っている。
教会の横にあったガストホフ(小さなホテル)は、ガレージを改装したような開放的な席が作ってあったが、ここも夕方になれば地元の人達で賑わうだろう。

Rattelsdorfの遠景は、周囲を牧草地に囲まれている。
工業国でありながら農業大国であるドイツでは、農家は国により収入が保証されているので、農地がこれだけキープされているのだが、やはり後継者不足の感は否めないようだ。

この日のルートはこれ。
バンベルクからバスで30分弱の距離にあるRattelsdorfより、ドイツ田舎ツーリングが始まる。
目指すは地図の右上にあるStaffelstein。
その間に通る集落では、どんなビールが待っており、どんな人と出会うのだろうか。
自転車を漕ぎ出す時は、いつもそんな期待が一杯である。

途中で会った老夫婦に
「何をしているのですか?」
と尋ねると、
「今から友達の家に遊びに行くので花を摘んでいるのよ」
との返答があった。
うーん、スローライフをエンジョイしている感じだ。

極小集落へ!そこにもビールがある

Ratteldorfから1km程離れたHöfenという街に行ってみたが、ここにある醸造所は残念ながら定休日。
よって、そのさらに1km程の所にあるFreudeneck(フロイデネック)という集落にやって来た。
ここには小さな醸造所Brauerei Fischerがある。
Rattelesdorfに所属する小さな集落なのだが、本当に小さい。
気になって調べてみたら、人口は50……50人!!?
航空写真を見てみたら、むーん、確かに50人くらいしか住んでいなさそうだ。

そんな集落にもしっかりと醸造所があるのが、フランケン地方のすごい所である。
ここは1880年創業の小さな小さな醸造所だ。
庭では、この家の子供達が遊んでいるが、彼も後々はこの醸造所を継ぐのだろう。
天気が良いので、外のテーブルに座ってビールを注文したいのだ……が、誰も来ない。
どうやらビールは店内のカウンターで注文するセルフサービス形式のようだ。

まずはフランケンの定番ビールである「ヘレス」。
陶器のジョッキで出されるのはビアガーデンのみかと思ったが、カウンター後ろのジョッキラックにずらりと並んでいるところを見ると、店内でも陶器で出しているようだ。
続いて、私が大好きな「ヴァイスビア」。
晴れた日は太陽の下でこれを飲むのは幸せな時間だ。
隣のテーブルには、ここから北へ行った所にあるCoburg(コーブルク)からやって来たという自転車乗りの夫婦2組がいた。
みんなで乾杯! 羨ましい老後の過ごし方。

さて、こちらの店はビールに関しては「セルフサービス」なのだが、食事の注文は席まで届けてくれる。
まあ当たり前の話で、注文してすぐに準備はできないというのが一番の理由なのだが。
メニューを見ると、小さな家族経営の店らしく、あまり種類がない。
ソーセージプレートやシュニッツェルといった典型的なドイツ料理が数種類並んでいるだけだ。
平日の営業ではそれほど多くの客が見込まれないので、仕方ないことだ。
「では、本日のメニューにしたらどう?」
メニューの前で悩んでいる僕に、カウンターのオバサンが提案してきた。
さて、それは何だろうか。
「パンの上にベーコン・チーズ・エッグが載っているの……まあ、食べればわかるわ」
とオバサンは続ける。

そして、出てきた物は……
う~ん、オバサンの言った通り(笑)、トーストの上にベーコン・チーズ・エッグが載っているシンプルな食事だった。
メニュー(定食)というよりも軽食に近い物だが、実際に食べてみると結構ボリューミー。
手でぱくりと食べると半熟卵が落ちそうになるので、まず卵を破り、ナイフとフォークで拡げながら、パンを切りつつ食べるのが一般的のようだ。
人口50人しかいないこんな田舎集落で、一体誰がこんな平日の昼間にやって来て、食事をしていくのだ?と思ったのだが、それでも数人の客がランチを楽しんでいた。

もう一皿は「Hausgemacht(ハウスゲマハト=自家製)」と誇らしげに書かれている「Brotzeit Teller(ブロートツァイト・テラー)」。
当「ビール文化研究所」で詳細に解説しているが、「切って盛るだけ」の料理がこのブロートツァイトである。
いろいろな種類があるのだが、これだと一皿に少しずつまとめて盛られてくるので、色々な味が楽しめる。

華麗なるリエゾン(移動路)

Freudneckの集落を離れて、来た道を引き返す。
ただし、そのまま帰るのではなく、Zapfendorf、Unterleiterbachといった川沿いの集落に点在する醸造所に立ち寄っていく。
途中、プープーっとクラクションが聞こえてきた。
そして、見えてきたのは新郎新婦を乗せたVWビートルのオープンカー。
どうやら、近くの教会で結婚式があるようだ。
こういう車が通りかかったら、沿道にいる人たちも祝福する。
手を振ったり、拍手をしたり……これはシャッターチャンスだ!とばかりにカメラを向けると、笑顔で手を振ってくれた。
「Herzlichen Glueckwunsch!!(おめでとう!)」
とこちらも手を振る。

マイン川沿いの自転車道

何度か橋を渡り、蛇行する川を越えるのだが、天気の良い夏の日だけに、所々にカヌーを漕ぐ人達が見えた。
護岸工事で痛々しいコンクリートがほとんどない川を、気持ち良さそうに漕いでいく。
畑の中の道を時々通るのは大きなトラクターである。
大きなお腹の農夫が、口笛を吹きながら運転しており、こちらを興味深げな目線を投げかけてくる。
そういうときは、手を振って写真を撮らせてもらう。

<次回へ続く>>